docomoの体質から見る障害問題

なんか久々の更新なんだけど、気にしない気にしない。

ここ最近、docomoの障害が多発して、品質低下が危惧されている。
具体的には

・2011/6/6
携帯電話の基地局とそれぞれの携帯電話との位置情報をひもづけるサーバーが故障し、バックアップに切り替えるも、切り替え時の再登録要求によって処理能力オーバーによりサービスが13時間停止。150万人に影響

・2011/8/16
SPモードネットワーク中継装置が故障し、ネットワークから切断されたスマートフォンからの再認証により、認証サーバーが処理能力オーバーとなりサービスが7時間停止 。110万人に影響。

・2011/12/20
SPモードメールにて、自分宛ではないメールを受信する重大な事故。SPモード内ネットワーク装置故障により、いったんスマートフォントの通信が切断。切断された端末からの再接続要求時に割り当てIPアドレスと端末のミスマッチングが大量の再接続要求負荷のため発生。そのため、他人へ誤ってメールを送付する重大な事故が発生。5時間にわたりメールサービスの停止、同様の認証に関わるサービスについては48時間近く停止。2万人に影響。

・2012/1/1
SPモードGWとiモードGWの間のトラフィックが増大し、SPモードでのメール受信ができなくなり、3時間にわたりサービス停止。260万人に影響。

・2012/1/25
新型パケット交換機に切り替え後、交換機が不安定な状態になり、さらには山手線不通というトラフィック需要増大が状況を悪化させ、通信規制を実施、交換前のパケット交換機に復旧し収束。5時間にわたり252万人に影響。

ソース
総務省 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモに対する事故防止、通信の秘密の保護及び 個人情報の適正な管理に係る指導 別紙
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban05_02000017.html

まず、ここで問題となるのはこの問題のほとんどがSPモードに起因するものが多いと言うこと。
スマートフォンの普及とともに、SPモードというのがdocomoの重要なインフラであるが、どうしてここまで問題が発生するのか、考えてみましょう。

・SPモードとは
そもそもSPモードとはどのようなものなのか

SPモード
「spモード」は、より便利に、安心してスマートフォンをご利用いただくためのスマートフォン向けプロバイダ(ISP)です。
http://www.nttdocomo.co.jp/service/provider/spmode/

はい、抽象的過ぎますね。もっと詳しく書いている資料から引用すると

sp モード は,より便利に安心してスマートフォンを利用可能な ISP である.ま た,スマートフォンのサービス提供 基盤は,スマートフォンに対し,多 様なサービスを提供するための総 合基盤であり,これにより,iモード 対応端末で提供しているサービス を,スマートフォン上で提供することなどが可能となった.
http://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/corporate/technology/rd/technical_journal/bn/vol18_3/vol18_3_038jp.pdf

というわけで。iモードで提供しているサービスをAndroidをはじめとしたスマートフォンで提供することを目的に開発されたシステムとなります。
そのためdocomoのみで提供されている特殊なシステムです。

具体的には既存の「CiRCUS」 で構築されているiモードシステムを拡張し、スマートフォンからPOP3SならびにSMTPSでメールのやりとりができるようにしたGW「MAPS」をベースとしている。

通常スマートフォンでは、世界的なメール規格であるMMSにてメールサービスを利用するか、通常のPCベースの POP3ないしIMAP4とSMTPを使うメールサービスいずれかを使うことが多い。

ここで、勘のよい人であれば、SPモードもPOP3SとSMTPSベースならば、通常のメールサービスとして利用できるのでは?と思われる。しかし、docomoでは

POP3S/SMTPS は,ユーザ認証時にメールアカウント(ユー ザ ID /パスワード)を利用するプ ロトコルであるため,一般的なメー ルクライアントでは,ユーザ自身が メールアカウントの設定作業を行う 必要がある.
そこで,sp モードメールでは,プ ロビジョニング機能を用意し,メー ルアカウントの設定作業を不要とし た.すなわち,自動的にサーバ側で 生成され払い出されたメールアカウントを用いて認証を行う方式とし た.また,払い出すメールアカウン トに有効期限をもたせ,サーバ側か ら強制的に変更を行うことでセキュ リティを高めている.
http://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/corporate/technology/rd/technical_journal/bn/vol18_3/vol18_3_045jp.pdf

と言うように、ユーザー配慮をしたために、専用のメーラーでの受信を前提としたシステムとしている訳です。

なぜ、このようなiモードシステムの拡張という手法をとったかと言うと、

sp モードのサービス実現にあたって は,低コストでかつ早期にサービス提 供を開始するため,既存システムを 最大限有効利用する方針とした.

sp モード契約判定や対応端末判 定などの接続機能については,コア ネットワークに機能配備を行い,既 存機能を拡張することにより実現 を図った.
http://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/corporate/technology/rd/technical_journal/bn/vol18_3/vol18_3_038jp.pdf

とあるように、低コストであること、また、おりしもiPhoneの普及で遅れを取っていたスマートフォン事業へ早期にサービスインをすることを狙ったために、このようなシステム構成を取ったのである。

ここで、古くからdocomoを使い続けてる人は、1つ思い出して欲しいことがある。
docomoは10年ほど前にも、同じような大規模サービス停止や障害を出しているのではないかと。

そう、1999年2月にスタートしたiモードサービスがサービスの爆発的ヒットにより、通信障害が発生し、200o年3月28日には全国600万台が不通になるトラブルを起こし、さらには連日のように障害が発生し、新聞報道にもなったiモード障害です。

このときの発生原因も爆発的な普及により、システムが処理しきれなくなる不具合が原因であり、結局数十億で導入されたシステムを3年で破棄し2003年2月22日に新システムへ切り替えという結果を招きました。

このように、過去に同様のミスをしているにもかかわらず、そこから何も学んでいないdocomoという会社の体質によるものではないかと少なからず考えてしまいます。

また、SPモードが現状のiモードシステムの拡張なのも、旧iモードシステムを3年で破棄したために現状システムを長く使って旧システムの投資額、新システムの投資額がかなりかかっている分、長く使いたいという考えが透けて見えてきます。

そのような、根本的体質が関わっている以上、SPモードのシステム刷新が行われない限り、同じ障害は繰り返されるのではないでしょうか。

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